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ゆたかな低炭素社会づくり ライフスタイルイノベーションの挑戦

「環境・生命文明社会」で“黄金のジパング”を 石田秀輝・東北大教授に聞く

2014年4月17日

 環境省は、大量生産・大量消費型に代表される物質資源型の社会から,エネルギーや資源を浪費することなく自然や人とのつながりを実感できる「環境・生命文明社会」を基本にして、政策立案をしていくことを決めた。自然観を持った新しいテクノロジー「ネイチャー・テクノロジー」の視点による新たな文明の創出を提唱している石田秀輝・東北大学大学院教授に、毎日新聞の元村有希子・編集委員が「環境・生命文明社会」と、日本の今後について聞いた。

インタビュー日:2014年2月25日

「環境・生命文明社会」について語り合った石田秀輝・東北大教授と元村有希子・毎日新聞編集委員

元村 環境省が提唱している「環境・生命文明社会」とは。

石田 環境・生命文明社会の反対側にあるのが物質資源型の社会。僕たちは豊かさを求めるために、今までは地下資源エネルギーを湯水のように使って、成長し、豊かになってきた。これを続けていいのかというと、いろんな限界が見えている。

 しかし、僕たちは豊かになりたい。我々はその豊かさをどこに求めるんだろうといったときに、新しい価値観を作らないといけない。エネルギー資源の使用量は制約されるが、その中で我々が豊かさを考えたときに、やっぱり自然の循環とか、持続可能な世界をつくっている自然とか、そういうものにもう一度視点を移す、足場を変えることが、環境・生命文明社会だろう。

◇もう生き方を変えるしかない

元村 以前から「成長の限界」などと言われていたが?

石田 もう本当に限界なんじゃないですか? 2012年にブラジル・リオデジャネイロで開かれた「国連持続可能な開発会議(リオプラス20)」の国連報告で、温暖化一つとっても、もう人間は生き方を変えるしか方法がないと指摘されている。要するに、今まで「何とかなるでしょう」っていう形だったが、生活を変えないとダメというところになっている。

元村 豊かさを問い直すというが、多くの人たちが求めている豊かさとは?

石田 80年代半ばから、日本に限定しても、モノの豊かさより心の豊かさを求める人が増えてきて、その差が広がってきた。だが、企業も国もこれに対応しているのか。実は、幸福度などでは、残念ながら日本はじり貧状態。これこそがまさに国民が思っていることと、実際の政策とのギャップだ。

 ビジネスでも、今の若者はモノを欲しがらないといわれているが、そんな若者がいるわけがない。要は欲しいものを全然市場に投入していないんです。物質型の豊かさを今でも市場に投入することだけがビジネスと思っている。だからこんなにギャップを作っているのにまだ気付いていない。

◇「間(ま)」のあるビジネスを

元村 「モノより人」「自然と共生」など、うなずくことばかりですが、大切なのは「どうやって」その社会を実現するかが課題です。まず、企業はどうすべきですか?

石田 企業は、というよりも、そもそもがいまのビジネスの形、それが一体どういう形か。それは全部依存型のライフスタイル。テクノロジーやサービスに依存をしている。行政もそう。依存型の極端なのが、自分は何もせずに、すべて自動でやってもらえるという完全介護型のスタイル。それが「豊か」なのかというところに疑問がある。

 その反対は自立型。その極端な例は自給自足型ですが、そんなライフスタイルは無理でしょう。その間にはさまざまなハードルがあって、そこを「間」と呼んでいるんですが、この部分を全然考えないで、自立か依存かという二者択一の選択をさせようとしている。どちらにもいけず、満足もできない、“間抜け”のビジネスがいっぱいで、「間」のあるビジネスを作らないといけない。

元村 利益を出すことが今の企業のミッションと考えられていますが、変われますか?

石田 いえいえ、それは変わる必要ない。心が豊かになると、人間の感性に訴えて企業は縮小するなんて、とんでもない間違いで、間を埋めるビジネスをやって、どんどん稼いでくれればいい。依存型のシステムって、少しうまくいかないとクレームが出て、フラストレーションがたまる。おまけに、少子高齢化などで市場はどんどん小さくなっていて、同じ土俵で戦っていると、コスト競争になってしまう。そうすると利益が薄くなってしまうんです。

 「間」のビジネスはカネじゃないのかというと、例えば私の時計、手巻きなんです。毎日巻かないと止まるんですよ。おまけに高い。なんでこんなもんが市場にあって、買うんだと思いますか。僕はこれが「間」だと思っている。巻くのは制約なんです。何もしない方がいいに決まっている。ところが毎日巻いていると、時計の調子が分かってきて、完全に道具になってくる。「間を埋める」というのはこういうことで、「超えられる制約」を与えてくれるテクノロジーやサービスなんです。超えられない制約は苦痛でしかないが、超えられる程度の制約を与えると、自分の意思で努力して超えていく、この繰り返しが愛着という新しい概念を生み出す。

元村 いい悪いに関係なく、今までの企業活動は私たちの楽しみを奪ってきたということなんですか?

石田 全くその通り。だから、“三種の神器”で冷蔵庫、洗濯機とか、市場に普及しないとき、いつかはあれを買うぞというときは、経済的な制約がかかっていた。それが100%普及したときに、それは既に利便性、快適性を追い求める形になっているので、そこに新しい価値観を作っていかないといけない。それをやめて、すべて全部自動化の方へいかせてしまう。いい悪いではなく、少なくともそれで今は市場を作れなくなる。だから、新しい市場とかサービスの形はその延長にはないし、それは環境によくないんです。

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