お知らせ

2017年9月30日をもちましてニュースサイト「MANTAN BizBuz」(https://bizbuz.mantan-web.jp/)はサービスを終了しました。
今後、株式会社MANTANのビジネス関連ニュースは「MANTANWEB」のビジネスコーナー(https://mantan-web.jp/biz/)に掲載いたします。

文字サイズ変更
ゆたかな低炭素社会づくり ライフスタイルイノベーションの挑戦

グリーンイノベーションを地域から世界へ 北九州市「アジア低炭素化センター」

2014年4月11日

 1901(明治34)年、官営八幡製鉄所が操業し、関連する化学工業などの工場が次々と建てられ、日本の近代産業をリードしてきた北九州市。だが、成長と引き換えに、深刻な公害が発生した。その課題を官民一体となって乗り越えてきた同市は、環境問題を解決するシステムをアジアに“輸出”すべく、「アジア低炭素化センター」を設立。環境技術の新たな可能性を探り始めた。

◇「灰色の町」を再生

1960年代に「死の海」といわれた洞海湾から青い海をよみがえらせた。公害克服の象徴となっている=北九州市提供

 同市の空は煙とばいじんが覆い、工業廃水が垂れ流された海は、魚はおろか、大腸菌さえすめない「死の海」と呼ばれた。50年、地元婦人会が立ち上がり、公害対策を求めて行政や議会、企業に働きかけた。市は70年に公害防止条例を制定し、厳しい環境基準を設けて規制を強化。企業もその基準をクリアするため技術開発に努めた。そうした努力で青い空と海を取り戻した同市は85年の経済協力開発機構(OECD)で「Gray City to Green City(灰色のまちから緑のまちへ)」と紹介された。

◇アジアから協力求められ

環境問題解決のノウハウや技術の輸出を行政が積極的に支援するため設立したアジア低炭素化センター=北九州市提供

 同市には80年代から、中国やインドネシアなどアジア諸国から公害対策での国際協力を求められ、市内の関連企業の紹介や研修の受け入れなどの支援を続けてきた。97年には同市と東南アジア4カ国6都市で「アジア環境協力都市ネットワーク」をつくり、00年に設立された「北九州イニシアティブネットワーク」は現在19カ国173都市が参加しており、これらを通じて、環境問題での国際協力を進めてきた。こうしたアジアとのネットワークを生かし、ノウハウや技術の輸出を行政が積極的に支援するために10年、「アジア低炭素化センター」が開設された。

◇自治体ならでは信用

スラバヤ市の廃棄物中間処理施設。ゴミの減量化に貢献した=北九州市提供

 環境問題は、廃棄物処理や上下水道などのインフラにかかわるものが多く、行政が窓口となる。地方の企業が単独で海外の自治体などにセールスするのはハードルも高い。センターはこれまでのネットワークを生かして、海外の自治体などにアプローチし、環境関連技術を持った市内外の企業をまとめて、解決を支援するのが役割だ。実際、北九州市にある廃棄物処理業「西原商事」がインドネシア・ジャカルタ市への進出を計画していた際、センターが既に廃棄物処理で支援を進めていたスラバヤ市を紹介し、廃棄物処理の中間施設を建設した。野積みになっていた廃棄物を、施設で分別し、有機物は同市の取り組みを提供して、コンポストによる堆肥(たいひ)化を進め、30%までの減量に成功した。

 同センターの本島直樹・事業化支援担当課長は「環境問題は解決まで時間がかかるので、長いお付き合いが必要だ。行政は、誰が担当になっても引き継いでいけるので、相手の行政機関も受け入れやすい。製品や技術ありきの戦略である『プロダクトアウト』では成功しないので、相手のニーズをしっかりと理解したうえで、それに応える『マーケットイン』の手法で北九州の企業にあるシーズをパッケージ化していくのがセンターの役割」と話す。

◇マスタープランづくりに

環境姉妹都市提携を調印した北橋健治・北九州市長(左)とトゥリ・リスマハリニ・スラバヤ市長=北九州市提供

 スラバヤ市では、廃棄物の減量化以外にも、国営工業団地のエネルギーを効率・最適化するスマート化や下水道の整備、上水道の浄化などさまざまなプロジェクトが進められている。本島さんは「個別のニーズに一つ一つ対応してきたが、もっと上位のレベルで、相手の自治体がどんな町をめざしていくのか、マスタープランを作って、それぞれのアクションプランに落としていくことが必要になってきた」といい、同センターでは「グリーンシティーの輸出」として、都市計画策定事業にも乗り出している。

 本島さんは「マスタープランは、コンサルタント会社に頼んでも作ることができるが、それではプランを作ったところで終わってしまう。行政としては、プランを作ってから、どうやって計画を実行していくか、そのノウハウがある。既に動いているプロジェクトも含めて、長い付き合いの中でまちづくりにつなげていくことが、環境問題の克服には重要だ」と語る。

◇環境姉妹都市の可能性

「アジア低炭素化センター」の本島直樹・事業化支援担当課長。環境技術のイノベーションを生む地元企業に温かい目を向ける

 こうした流れの中で、北九州市とスラバヤ市は12年、環境姉妹都市提携を結び、さらなるインフラやシステムの輸出、人材育成により、双方の都市が相互利益を拡大し、低炭素社会づくりを目指す。本島さんは「従来の姉妹都市は文化交流が中心だったが、『環境』を目的にすると、より具体的な連携ができると思う。日本の自治体や企業は問題を解決することが得意なはずなので、バイオマスだったり、廃棄物の処理だったり、各地域で課題を解決してきた技術や製品があり、世界に目を向ければ必ずニーズがある」という。

 同センターでは、スラバヤ市以外にも中国・大連市やベトナム・ホーチミン市、インド・ムンバイ市などで、既に約60件のプロジェクトが進行中だ。さらに北九州市では、地元企業がエコ電球の開発やセラミックの新技術を開発するなど環境関連で多くのシーズが生まれている。「環境」を基軸にしたイノベーションを、地域から世界へ発信する北九州市。大きな可能性が広がっているだろう。

文=猪狩淳一
写真=飯野茂男

MAiDiGi TV動画 ウイークリーニュースONZE×BizBuz:北九州から世界へ!アジア低炭素化センター