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ゆたかな低炭素社会づくり ライフスタイルイノベーションの挑戦

クルマから歩きへ 千年の都の交通ライフスタイル革命

2014年3月4日

 遷都1200年の古都・京都。世界的な観光地として知られる京都は、シーズンには多くの観光客が自動車で訪れる。1997年12月、気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)が開かれてから、低炭素社会への積極的な取り組みを続けている京都では、この「クルマ社会」から脱却し、公共交通を活用した新たなライフスタイルを実現する「歩くまち・京都」を目指す戦略を進めている。

◇「歩くまち・京都」の未来

路側帯を広げ、自転車走行レーンを明示した京都市内の道路。自動車の通行レーンを狭める取り組みだ

 車の渋滞はなく、バスがスイスイと走り、次世代型路面電車「LRT(ライト・レール・トランジット)」や専用道路を高速で走るバス高速輸送システム「BRT(バス・ラピッド・トランジット)」も登場。目抜き通りとなる四条通は、拡幅された歩道に、バス待ちの客がいても通行に支障がない、広いバス停が設けられ、多くの観光客がウインドーショッピングを楽しみながら歩いている……。こんな風景が、京都市が目標とする「歩くまち・京都」の未来の姿だ。

 京都市は2010年1月、「歩くまち・京都」総合交通戦略を策定した。2000年に交通分担率の28.3%を占めていた自動車を20%以下にし、46%の徒歩と公共交通を55%超にするのが目標だ。そのために、世界トップレベルの使いやすさにする「既存の公共交通を再編整備」、歩く魅力を味わえる歩行者優先の「まちづくり」、歩いて楽しい暮らしに転換する「ライフスタイル」の三つの取り組みを柱に、88の施策を立案し、既に80事業に着手している。

◇50年目の再整備 京都駅南口広場

 まず、「公共交通」では、先行プロジェクトして、洛西地域で、市や私鉄、バス会社などがバスの系統を整理し、JRや私鉄と連携しながら、利用者が使いやすいダイヤと案内施設を整備した。さらに、シンボルプロジェクトとしては、1964年の東海道新幹線開通から、ほとんど手が付けられていないJR京都駅南側広場の整備を計画している。これは、新幹線の改札から、近鉄京都線があり、京都の玄関口として多くの観光客が利用するが、タクシー乗り場や、観光バス乗り場、路線バス、長距離バス乗り場が分散し、車両の混雑が問題となっている。市は、東西約660メートルの範囲で、正面に路線バス乗り場を集約し、大きなバスプールを設け、地下に収納する機械式の駐輪場を備え、待ち合わせなどの乗降客らがゆったりと過ごせるスペースを確保した広場を設けるという。約33億円をかけた再整備は、2015年度完成を目標に進められている。

◇繁華街・四条通のトランジットモール化

京都高島屋に掲げられた「歩くまち・京都」の看板。駐車場へ入る車にアピールする狙いだ

 「まちづくり」では、高島屋、大丸、藤井大丸の3百貨店をはじめ、海外ブランドなども多く出店し、多くの観光客でにぎわう四条通で、革新的な計画を進めている。現在、同通は4車線ある道路はあるが、1車線は路上駐車の車が目立つ。さらに、目抜き通りにしては、あまり広くはない歩道にあるバス停には、バス待ちの客が並んでいて、歩行者の通路を狭めている。バスがやってくるが、路上駐車の車があり、歩道に寄せられず、歩行者はいったん車道に出てバスに乗ることもある。計画では、車道を減らし、歩道を拡幅、車寄せができるバスポートを張り出させて、ゆったりと歩ける「トランジットモール」化を目指している。

 さらに祇園、八坂神社、清水寺、東福寺などの有名な観光スポットが並びながら、歩道が狭く、交通量も多い東大路通の整備も検討している。さらに、京都特有の「碁盤の目」状になった細い道路の歩行者の利便性を高めるため、車の通行部分を3メートルに減らし、路側帯を広げ、自転車の通行レーンを明示する整備も進めている。

◇全国初の無料アプリでCO2削減をアピール

アプリ「歩くまち京都 バス・鉄道の達人」。経路と所要時間を検索し、CO2削減量も明示した画面(左)とおすすめの観光ルートも紹介している

 最後の「ライフスタイル」では、交通手段による二酸化炭素(CO2)排出量削減を訴えるなどして、交通利用スタイルの見直しを促す「モビリティー・マネジメント」を進めている。観光客については、車から公共交通や自転車に乗り換えて観光を楽しむ「パークアンドライド」の利用を進め、パークアンドライド駐車場を48カ所(ピーク時)用意し、2002年の1700台から2013年には約6000台収容可能にした。

 ユニークな取り組みとして、公共交通を使って、目的地までの経路や所要時間を調べられる無料のアプリ「歩くまち京都アプリ バス・鉄道の達人」を開発。このアプリは全国初の機能として、バスの運行状況をリアルタイムで把握し、道路事情を考慮して、バスの到着時刻や所要時間を予測して表示する。マイカー利用と比較したCO2削減量や消費カロリーも表示されるという優れもので、2013年8月末から提供し、4万5 000ダウンロード(14年1月末時点)される人気となっている。

◇都市整備の“常識”覆す戦略

 こうした取り組みを進める京都市歩くまち推進室の大井貴之・企画課長は「都市整備というのは、どちらかといえば交通量の増加に伴い道路を広げる取り組みを進めてきたが、『歩くまち・京都』は車道を狭め、『歩く』ことを中心としたまちと暮らしに転換し、車を減らして、低炭素社会づくりに貢献する取り組みだと思う。これまで計画段階で、なかなか市民や観光客に伝わっていなかったが、四条通整備に着手でき、ようやく目に見えるものが出てくるので、理解が進んでいくことを期待している」と話す。

 従来の都市整備の“常識”を覆し、車を通りにくくする。世界中から観光客が集まる京都で、クルマから歩きへ、ライフスタイルの変革を具現化する戦略が成功するか、注目だ。

文=猪狩淳一
写真=中山和弘