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ゆたかな低炭素社会づくり ライフスタイルイノベーションの挑戦

讃岐うどんがめぐる挑戦! うどんかすで発電、燃料化も

2014年4月16日

 「うどん県」で話題となった香川県の名物といえばもちろん「讃岐うどん」だ。県内には数百ものうどん店があり、お土産としても大人気だ。その一方で、大量のうどんを作る際に出る「廃棄うどん」が問題となっていた。そこで、いらなくなったうどんを「循環」させようと、企業と市民、行政が連携したプロジェクトが立ち上がった。

◇地元メーカーが発電プラント開発

うどんからバイオエタノールを抽出するプラントと池津英二社長

 「廃棄うどん」という課題に立ち上がったのが、地元・高松の産業機械メーカー「ちよだ製作所」だ。元々、ドイツのメタン発酵プラントを、日本に設置するプロジェクトに参加し、その技術を学んでいた池津英二社長に2009年、県産業技術センターと産業技術総合研究所四国センターが、冷凍うどん工場から出る残渣の活用を持ちかけた。池津社長らはまず残渣から代替燃料となるバイオエタノールを製造するプラントを開発。約20キロのうどん残渣からアルコール度数90度以上の上質なエタノールを2リットル抽出することに成功した。池津社長は「うどんは小麦粉が原料で糖度が高く、エタノールの抽出が容易」と話す。

うどんからメタンガスをつくるタンク。多くの見学者が訪れる

 そして13年、ちよだ製作所は、エタノールを抽出した残りかすを発酵させ、発生したメタンガスを燃やして発電機を回す「うどん発電」にも成功。直径8メートル、高さ8メートルの発酵タンクを備えたプラントは1日3〜4トンのうどんを処理し、エタノールを抽出したうえに、年間18万キロワット時の発電が可能だ。12年から始まった再生可能エネルギーで発電した電力の固定価格買い取り制度により、年間約700万円の収入が得られるという。池津社長は「以前は発電しても、電線につなぐことさえ難しかったが、新制度の導入で簡単に売電できるようになった」と評価する。「うどん発電」は大きな話題となり、全国に発信された。池津社長にも問い合わせが相次ぎ、見学者も毎日のように訪れているという。その中で、新たな技術提案も受け、これまで液肥として活用していた残渣を固形化して体積を劇的に減らし、肥料として商品化することに取り組むなど、さらなるイノベーションを生んでいる。

◇コンソーシアムで「循環」目指す

来年度の活動を話し合う「うどんまるごと循環コンソーシアム」のメンバー

 ちよだ製作所でうどん残渣の活用を検討し始めたころ、うどん店から出る割りばしのリサイクルなどに取り組んでいた地域のNPOなどが、うどん残渣の活用に着目した。うどんを回収して、エタノールを抽出、うどんの製造やゆでるための燃料として使い、さらに抽出後のかすから液肥をつくって、うどんの原料となる小麦畑や薬味のねぎ畑にまく。「うどんでうどんをゆでて、うどんをつくる」というサイクルを構築するため、県と市、企業、NPOなどが参加する「うどんまるごと循環コンソーシアム」を設立した。

「うどんまるごと循環コンソーシアム」の久米紳介事務局長

 コンソーシアムは、廃棄うどんの回収や液肥の利用先の確保をはじめ、情報発信やイベントの開催にも取り組んでいる。角田(すまだ)富雄会長は「毎日食べているうどんが、そんなに捨てられとるんか、とまず驚いた。それを何とかせんとと取り組んできたが、発電までできるとは思っていなかった。さまざまなメンバーが前向きに取り組んでいるので、さらに広げていきたい」と語る。

 さらに、コンソーシアムの久米紳介事務局長は「この循環の仕組みは、うどんだけでなく、ラーメンや生ゴミでもできる。コンソーシアムとしては、回収の事業化など採算性を確保していく努力をするとともに、多くの市民や子供たちに参加してもらって、循環の大切さを知らせていきたい」と話す。池津社長は「大企業が膨大な費用をかけて、大きなプラントを造るのはリスクも大きい。地域単位で展開できる中小規模のプラントを実用化して広げたい」と新たな目標を語った。

◇「讃岐うどん」のブランド力で

 香川大学大学院地域マネジメント研究科の学生としてプロジェクトの立ち上がりからかかわってきた小森繁・東北大大学院教授は「『讃岐うどん』への愛情とブランド力で成功している部分は大きい。地元の市民、企業、行政がしっかり参加し、連携している。地元の人は地域の問題から“逃げる”ことができない。最初は地元産の割りばしの循環利用から始まったパートナーシップを、テーマをバイオエタノールやうどん発電に変えながら発展させて続けている。今後の課題は持続可能なビジネスモデルの確立であり、国の制度も含め、考えていく必要がある」と指摘する。

 「うどん県」として、地域ブランドを高めた讃岐うどんを、余すことなく活用し、新たな地域のパワーにしていこうというプロジェクト。文字通りうどんを「活力源」にして、長く太くつながっていくだろう。

文=猪狩淳一
写真=中山和弘