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健康寿命:高齢者にアスリート向けリハビリで成果

「ハビリス」の室内運動スペースでトレーニングする利用者を励ます高島孝之院長(中央)

 厚生労働省によると、日常生活に制限のない期間(健康寿命)が2013年時点で男性が71.19歳、女性が74.21歳と延び続けているが、01年から13年までの健康寿命の延び(男性1.79年、女性1.56年)は、同期間の平均寿命の延び(男性2.14年、女性1.68年)と比べて小さいことが分かった。政府は、高齢者の生活の向上や医療費や介護費の削減を目指し、20年までに健康寿命を1歳延ばすことを目標に掲げている。そんな中、一流アスリートをけがなどから復帰させるリハビリ施設が、高齢者向けにサービスを提供し、成果を上げている。その現場を訪ねた。【猪狩淳一】

 大阪府茨木市の「ジュハイ・フィールド ハビリス さわらぎ鍼灸院」は5月、整形外科医でサッカーJリーグ・ガンバ大阪のチームドクターを務める高島孝之院長が、アスリート向けリハビリ施設として開設した。約10人のスタッフは、身体機能回復のリハビリテーションを行う理学療法士と、スポーツ選手のけがの応急処置やリハビリ、コンディショニングなどを支援する日本体育協会公認のアスレチックトレーナー、鍼灸師といったリハビリの専門資格を持っている。

 200年続いた酒蔵の一部を利用した施設には、元サッカー・イングランド代表のデービッド・ベッカム選手が日韓ワールドカップ(W杯)で骨折の回復のために用いたことで知られる酸素カプセルもある施術室や、最新のトレーニング機器を備えた室内運動スペース、人工芝を敷いた屋外のフィールドを備えている。

 近くで整形外科医院を開設している高島院長が、専門家のサポートをあまり受けられない学生アスリートらのリハビリを目的に開設したものだが、施設に隣接する高齢者向けのデイケア施設の利用者が、アスリートがリハビリしている姿を見て、利用を希望したことをきっかけに、高齢者向けのサービスを始めた。高島院長は「アスリートがけがをした部位に負担をかけずに体の動かす方法と、病気などで機能が低下した高齢者がうまく動くためのコツは同じなんです」という。さらに「高齢者の方が可動域が狭く、無理をするとかえって体を壊してしまう恐れがあり、アスリートよりも指導は難しい」と専門家のサポートの重要性を指摘する。

 同施設を利用する65歳の女性は、約8年前に脚を悪くして好きなテニスができなくなっていたが、トレーニングして数カ月でボールを打ち返せるまでに回復した。「トレーニングで日常生活でも力が出るようになり、歩けなかったのが、1日30分歩けるようになった。テニスをする夢を見るほどだったので、実際にプレーするのが本当に楽しみ」と笑顔を見せた。アスレチックトレーナーの上原和浩さんは「最初は暗い表情をしていた利用者もトレーニングで達成感を得て明るい表情になります」と話した。

 経済産業省の産業活動分析によると、大手フィットネスクラブの会員のうち60歳以上の割合が年々増加しており、利用者の年齢構成比では05年から5年間で、30歳代が24.4%から20.7%と3.1ポイント下がったのに対し、60歳以上が19.1%から24.9%と5.9ポイント上がっている。また、14年の「スポーツクラブ使用料」の1世帯当たりの年間支出金額をみると、世帯主が60歳代の世帯の支出金額が7194 円と最多で、1世帯1人当たりの年間支出金額も2655円で最も多くなっている。

 高島院長は「ハビリス」という施設名を、「リハビリ」の語源ともなったラテン語の「Habil」から生まれた「発達」や「機能の獲得」など意味する「ハビリテーション」から付けたといい、「施設に来たときよりさらによくなるようにと名付けました」と語る。さらに「高齢者のリハビリというと寝起きや食事など最低限の生活ができるまでを目的とするが、社会のために役に立って、自分の趣味ができるようになるのが、これからの高齢化社会に必要なのではないか」と話す。

 2020年代初頭には団塊世代が一斉に後期高齢者に突入し、高齢者の健康は社会の大きな課題となる中、こうした積極的な健康への取り組みが注目されるだろう。

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