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バルミューダ:扇風機の次はトースター 急成長家電メーカー社長が明かすものづくりへのこだわり

新製品「バルミューダ ザ・トースター」をアピールするバルミューダの寺尾玄社長

心地よい自然な風を再現した扇風機など、大手にはない独自の発想を生かした製品を世に送り出し急成長する家電メーカーの「バルミューダ」(東京都武蔵野市)が、今度はトースターを発売する。独自のスチーム機能と温度制御を備えたトースター「BALMUDA The Toaster(バルミューダ ザ・トースター)」だ。同社はこれまで空調機器を中心に手掛けてきたが、キッチン家電は初めて。価格は2万2900円(税抜き)と一般的なトースターと比べると高価格だが、「パンを家で食べる人に、一番いい体験を届けることができる商品」と自信を見せる同社の寺尾玄社長に、開発の経緯やものづくりへのこだわりなどを聞いた。

◇グリーンファンのヒットで急成長

2003年設立の同社は、当初はパソコン用の周辺機器などを開発、販売していた。同社を一躍有名にしたのは、10年に発売した、独自の二重構造の羽根を持ち、心地よい自然な風を発生させる扇風機「グリーンファン」だった。当時、扇風機としては3万円台という高価格ながら、その性能が評判を呼び、初年度で約1万2000台を販売するヒット商品となった。同社の売上高も発売前の09年が約4500万円だったが、同製品などのヒットにより10年が約2億5000万円、11年が約8億5000万円と急成長。その後も売上高は右肩上がりに伸びているという。

「扇風機はコモディティー化(一般化)が進んでいるが、地球温暖化が進む中、もう一度需要が来ると思っていた」と寺尾社長。グリーンファンは「従来の扇風機のように熱い空気をかき混ぜるのではなく、自然界に吹いている風が扇風機から出せたら涼しいのでは」という思いから開発に至った。3万円台の扇風機の販売は周囲からも驚かれたというが、「価値をちゃんと伝えることができたら絶対売れると思っていた。そもそも、そのときは倒産寸前だった。力業で商品化までたどり着けて、ヒットしたという感じ。それはうれしかった」と当時を振り返った。

扇風機のほか、空気清浄機や加湿器なども発売し、その性能や洗練されたデザインなどで、同社の製品は多くの消費者の関心を引きつけた。ものづくりへのこだわりを聞くと、「常に“ユーザーの体験”を考えて開発している。家電というと、性能や価格が比べられるが、それってすごくつまらないこと」と持論を展開しつつ、「製品としてよいものとは何かというと、それは体験だと思っている。その製品が何をしてくれるか、それを使うことで何が起きるかという体験。家電を使って、そこで感じる“よさ”を提供するべきだと考えて開発に注力している」と考えを明かした。

◇開発中に焼き上げたパンは5000枚

そんな同社が次に手掛けたのが、今回発表したトースターだ。空調機器ではなく新たにキッチン家電を開発した理由について、寺尾社長は「もっと自分たちがよいと思う体験を届けたいと思った。空調機器は五感でいうと、触覚と視覚と聴覚でしか“体験”を提供できないが、食というフィールドだったら、味覚と嗅覚を加えた五感で自分たちが考えるよさをもっと表現できると思った」と説明。中でも第1弾にトースターを選んだのは、「毎朝私がトーストを食べていたから。私たちが作ったらもっとおいしくなるなと思った」と笑顔でその理由を語った。

独自のスチーム技術のほか、庫内の温度を自動的に調整する機能も搭載する。本体の吸水口に小さじ1杯の水を注ぎ運転をスタートさせると、庫内にスチームが充満し、水分は気体よりも速く加熱されるため、パンの表面だけが軽く焼け、パンの中に水分が閉じ込められる。また、パンをおいしく焼き上げるには、パンの中の軟らかさと風味がよみがえる60度前後、表面がきつね色に色づき始める160度前後、焦げ目がつき始める220度前後の三つの温度帯が重要といい、上下のヒーターを細かく自動調整することで、三つの温度帯を「完璧に」制御。これにより、「表面は香ばしく焼き上がっていながら、中は水分をたっぷり含んだコントラストに富んだ食感を実現する」という。トースト、フランスパン、クロワッサンなど、焼くパンの種類によって、異なる五つのモードがある。

開発のきっかけは、昨年、社員と行ったバーベキュー大会だった。「その日は土砂降りの雨で、そんな中、社員の誰かが買ってきた食パンを炭火で焼いていて。食べてみるとまわりがカリッと、中はフワフワで、おいしかった。『これだ!』と思った。この味を再現できればバルミューダのトースターになると思った」と当時を振り返る。

目標が決まると行動は早かった。翌日から、会社の駐車場にグリラーを出して毎日パンを焼く実験を始めた。しかし、「火が違うのか、グリラーが違うのか、炭火との距離が違うのか……。いろんなパラメーターを変えて実験したけど同じ味にならなかった」という。やがて「ある社員が『あの日は土砂降りだったよね』と言いだして。それで、おいしくパンを焼き上げるには湿度や水分が関係あるのではと気付いた。結局、スチームを見つけるのは、そういうヒントがあったので、比較的早くたどり着けたが、一番苦労したのは庫内のヒーターの制御だった。トースターとしてはありえないくらい複雑なアルゴリズムで、それを実現するために、かなりいいマイコンを搭載している。開発ではパンを約5000枚焼き上げた」と苦笑交じりに当時の苦労を語った。

◇受注状況にうれしい悲鳴 次のアイデアは?

苦労の末、開発したトースターは、6月中旬から出荷が開始される予定で、オンラインショップのほか、百貨店などで販売するという。現在、オンラインストアで予約を受け付けているが、寺尾社長は「予約がかなり入っている。これまでにないくらい受注状況がいい。店頭に並ぶ前に予約のお客様に届けないといけないので、店頭に並ぶのはもう少し遅くなるかも」とうれしい悲鳴を上げつつ、「全てのトーストを食べる方に使っていただきたいというのが我々の願い。パンを家で食べる人に、一番いい体験を届けることができる商品と思っている。だから、皆さんに使ってほしい」と思いを込める。

今後もキッチン家電の開発を続けていくといい、「とてもチャレンジしがいのあるフィールドで、手応えを感じている。ここで我々の考えるセンスとか、提供したいよい体験が表現できるんじゃないかと考えている」と意欲的だ。今後の製品開発について聞くと、「今回、私がパン好きで、毎朝食べるからトースターを作った。あと私が好きなのは、肉、空揚げ、お米……。これらも突き詰めていけばもっとおいしくなるだろうなって考えている」と笑顔でアイデアの一部を明かした。

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